広島大の研究チームは、広島県の山間地域の住民を対象にした接種事業で、肺炎の死亡率が大幅に減少したことを実証した。
研究者は「高齢者が亡くなる原因の大きな部分を占める肺炎死亡の減少につながったのは有意義だ」と話す。
成人の肺炎は細菌やウイルスなどで引き起こされる。原因が判明しているもののうち最大の要因は肺炎球菌で、全体の約2割を占めるとされる。
肺炎球菌は主に子どもの鼻やのどに存在し、せきやくしゃみを通じて広がる。高齢者の口内に常在している場合もある。
子どもからの感染や免疫力の低下、飲み込む機能の衰えなどで肺炎に至る。
2014年から65歳の人などに対する定期接種で使われている肺炎球菌ワクチンは、90種類以上ある肺炎球菌のうち23種類に有効で、肺炎球菌による肺炎の約4割を予防できると考えられている。
広島大などのチームは、定期接種化に先駆けて、10年10月~15年3月の期間に、広島県の山間地に位置する人口約1万7千人の世羅町から出資を受け、地元医師会などと共同で希望する高齢者に肺炎球菌ワクチンを接種する事業を行った。
世羅町は65歳以上の人口が占める高齢化率が40%と国の人口構成を先取りしていることや、人口の出入りが少なく研究の評価がしやすいことなどから選ばれた。
▽25%の減少
ワクチンの接種を受けたのは町内の65歳以上の約43%に当たる3422人で、5年間の調査で295人が肺炎を発症した。接種した人では肺炎の発症率が1年間で千人当たり20・3人(年2%)だった。
自治体が死因などのデータを集計する人口動態統計に基づいて分析したところ、高齢化の進行で増加傾向にあった肺炎による死亡率がワクチンの導入後に減少に転じ、25%の低下が確認された。
世羅町で肺炎で亡くなる人は00~09年には千人当たり年間0・23人増加していたが、10年以降は同0・04人減少したと評価された。
広島県全体や全国では同時期にこうした傾向が見られなかったことから、ワクチンを導入したことが世羅町の肺炎死亡率低下をもたらした主要な原因と判断した。
研究を率いた広島大分子内科学の服部登教授(呼吸器内科)は「肺炎死亡率が増加する中で減少に転じるのは大きな出来事だ。肺炎の原因はいろいろあるが、肺炎球菌のワクチンが自治体全体の肺炎死亡に影響を与えたことを初めて示した」と指摘している。
https://www.47news.jp/13172032.html
引用元: ・【広島大学研究】日本人の死因第4位、地域の肺炎死亡25%大幅減 高齢者に肺炎球菌ワクチン接種 広島の山間地で実証・・・研究を率いた教授 「肺炎死亡率が増加する中で減少に転じるのは大きな出来事だ」

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