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しかし、東京・銀座にある老舗デパート内の有名ブランド店従業員・相根愛さん(仮名・40代)は「未だ爆買いは戻ってこない」と嘆息する。
「目抜き通りを歩けば外国人観光客の姿は見かけるものの、財布の紐は非常に硬く、百貨店に入ってくる客は少ないです。特に爆買いの象徴であった裕福な中国人客は、今も戻ってきていません」(相根さん)
◆リーズナブルに日本文化を楽しみたい中間層
確かに、コロナ前の水準に戻ったとされる11月の訪日外国人客数をみると、中国だけに限れば対2019年比で65.6%減と回復からはほど遠い。2月10日から旧正月、春節の大型休暇があり多くの中国人が旅行へ出かける時期だが、訪日については以前の水準に戻らないのではないかと見られている。
なにより現在、中国国内では長らく続いた不動産バブルが弾け、かつての富裕層たちは貯蓄に走り、消費をしなくなったと報じられている。そのため中国からの観光旅行は制限がなくなったにも関わらず、以前のような勢いはなく、それでも訪日している中国人観光客は派手に「爆買い」をしなくなった。反面、円安を背景とした割安感を求め、リーズナブルに日本文化を楽しみたいという中国を含めた外国の中間層が、日本へやってきている模様である。
中国人に限らず、インバウンド客たちの質が大きく変化しているという指摘は多い。そして彼らが目指すのは、日本国内の牛丼店や回転寿司店、ラーメン店、そして街中のコンビニなのだ。
「1000円でおいしい肉がたくさん食べられ、妻も子供たちも大喜び。毎日でも通いたい」
こう話すのは、東京・新橋の牛丼チェーン店で食事を済ませたばかりだという、中国人の何さん(仮名・40代)。家族5人で牛丼セットと牛焼き肉、豚焼肉にすき焼きを食べたといい、満足げにお腹をさすっている。コロナ禍前にも東京や大阪を訪れ、爆買いしたり、高級旅館に宿泊したこともあるというが、現在は、日本の庶民的な店が何より魅力的だという。
「日本の大衆店はとにかく質が高いし、清潔。中国都市部で同じものを食べれば、倍以上取られると思います。逆に日本の高級店は、値段以上の価値がなく、同じ金額を払うのなら、中国や東南アジアに行った方が良いです。日本の高級店は、そこで働く従業員の給与も安いからか、あまりサービスやホスピタリティを感じられません」(何さん)
◆回る寿司やラーメンのお店は満足だけど、高級店のサービスは物足りない
中国人の何さんのような意見は、別の国から日本へやってきた観光客からも聞かれる。千葉・市川市の回転寿司店を訪れていたタイ人のカオサイさん(仮名・30代)が興奮気味に語る。
「回るスシやラーメンのお店は安くて美味しいし、いろんな種類があってすごい。日本人はなぜこんなに良いものを早く教えてくれなかったのか(笑)。特に回るスシ店のシステムは最高で、見ているだけでも楽しい。席で注文すればスシが飛んでくるのを見て、子供は泣いて喜んでいますよ。国の親族や友人からは、日本のコンビニで買えるお菓子をお土産にと頼まれています」(カオサイさん)
テーブルのタブレットで注文すると、その皿が自動的にレーンを動いてテーブルで止まることを「飛んでくる」と言っているらしい。省人化のために導入されたこれらのシステムについて感動を口にするカオサイさんだが、以前来日した際に宿泊した高級ホテルや高級寿司店、高級レストランでは、前述の何さん同様、ひどくがっかりしたと話す。
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インバウンド客といえば、大胆に消費する金持ちの外国人、というイメージが強かったが、コロナ禍後の客層は随分と異なっている。確かに、日本人としては「もっとどんどん金を使ってほしい」「爆買いをしてほしい」と考えがちだが、彼らは、日本の大衆的な文化に感激し、わたしたちの日常に魅了されている。一部、金払いの悪い外国人が押し寄せて迷惑、という見解を示す人もいるかもしれないが、日本文化に敬意を払ってくれる新たなインバウンド客たちには、私たちもしっかり敬意を返しておきたいところである。
引用元: ・戻ってきた訪日外国人客「爆買いの象徴であった裕福な中国人客は戻ってきていません」 [1/22] [昆虫図鑑★]
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