川勝康弘Yasuhiro Kawakatsu
公開日 2025/9/22(月)
がんになると体重や筋肉が急激に減ってしまう現象がよく起こりますが、実はこれまで、その詳しい仕組みははっきりとは解明されていませんでした。
今回、カナダのアルバータ大学(UAlberta)で行われた研究によって、がん患者の筋肉には「痩せやすいタイプ」と「痩せにくいタイプ」という2種類の異なる性質があることが初めて明らかになりました。
この2種類の筋肉タイプは、筋肉の中にある「RNA」という分子の働き方の違いによって決まるというのです。
さらに、「痩せやすいタイプ」の筋肉では、免疫や代謝、神経といった複数の仕組みが複雑に絡み合った異常が起きており、単純に栄養を補給するだけでは筋肉の衰えを防ぐことが難しいことも分かりました。
この発見により、患者さんの筋肉の状態を事前に予測したり、これまでにない新しい治療法が開発される可能性も示されています。
では、がん患者の筋肉を衰えさせてしまう本当の原因は、一体どのような仕組みで起きているのでしょうか?
研究内容の詳細は2025年9月10日に『Nature』にて発表されました。
Molecular subtypes of human skeletal muscle in cancer cachexia
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09502-0
体が食べても痩せてしまう理由──がんが筋肉を奪うメカニズムを探る
がんが進行すると、多くの患者さんの体がどんどん痩せていきます。
普通、体重が減るのは食事が十分に取れていないからだと思われがちですが、がん患者の場合、たとえしっかり食べていても体重が減ってしまうことがあります。
なぜでしょうか?
実は、がん細胞が体の中に存在すると、筋肉や脂肪が次第に削られるように失われる現象が起きます。
このような症状を、医学では「がん悪液質(がんによる激やせ)」と呼んでいます。
この状態になると体力が大幅に落ち、病気への抵抗力が弱まるため、生きる力(生命予後)にも影響を与えます。
そのため、医療現場では深刻な問題として注目されてきました。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/185407
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