「まるで戦争の直後みたいだ。何もなくなってしまった」
能登半島の先端にある珠洲市で暮らす同市議の浜田隆伸さん(62)は、同市正院町の住宅街にある自宅周辺の惨状をそう説明し、落胆した。自宅は大きく損傷し、密集していた周囲の木造住宅は垂直方向に押しつぶされたように崩れ、残った瓦屋根が道路を塞いでいる。
年末年始で市内の実家に帰省していた女性(51)も驚きを隠せない。地震直後に慌てて家の外に出ると、近くの木造住宅が崩れ、瓦屋根がそのまま「ドスン」と大きな音を立てて地面に崩れ落ちた。「実家の周囲の住宅のうち7~8割は倒壊している」といい、複数の知人が家の下敷きになった。
これほど壊滅的な被害となった背景には、街の低い耐震化率と、高い高齢化率がある。
珠洲市によると、市内にある住宅約6000軒のうち、2018年度末までに国の耐震基準を満たしていたのはわずか51%。同じ時期の全国の耐震化率(87%)と比べても極端に低かった。一方、20年の珠洲市の65歳以上の割合(高齢化率)は、石川県内で最も高い51・7%だ。
新耐震基準が適用された1981年以前に建てられた古い木造住宅が多く、高齢化に伴い耐震化工事もなかなか進んでいなかった。家主が亡くなったり、高齢者施設に入ったりして、市全体の2割程度が空き家になっており、手入れが行き届かずに老朽化しているケースも少なくなかったとみられる。
さらに、そうした街を弱らせていたのが、20年12月から能登半島で続いた「群発地震」だった。22年6月には最大震度6弱、23年5月には震度6強の地震が発生。いずれも珠洲市は被害を受けていた。
23年の地震後、倒壊の危険性を調査する県職員ら応急危険度判定士が「危険」と判定した住居は、珠洲市を中心に361棟、「要注意」は689棟に上った。今回の地震で倒壊した珠洲市内の民家の中には、玄関付近に「危険」を示す赤い紙が張られている建物もあった。過去の地震によって家に小さな損傷が蓄積し、倒壊につながった可能性がある。
市議の浜田さんは「正院町の多くは80代の住民だ。昨年の地震でダメージを受けていても、建て直す気力や資金力が無かった」と嘆いた。
珠洲市や輪島市などの被災地では、倒壊した建物の下敷きになった人の救助活動が進められている。しかし地震で道路が崩落するなどして救援が間に合っていない。
珠洲市の泉谷満寿裕(ますひろ)市長は2日午後に行われた石川県の災害対策本部会議で「壊滅的な被害だ。市内の6000世帯の多くが全壊またはほぼ全壊だ。道路が寸断されており、支援物資を届けるのが困難だ」と窮状を訴えた。【柳楽未来、菅沼舞、郡悠介】
毎日新聞 2024/1/3 20:28(最終更新 1/3 21:16)
https://mainichi.jp/articles/20240103/k00/00m/040/256000c
引用元: ・【能登半島地震】低い耐震化率 高い高齢化率 「壊滅的」被害招く [蚤の市★]
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