東洋経済2025/09/20
https://toyokeizai.net/articles/-/903674■7-8割が不登校経験、何らかの困りごと抱える
定時制高校と聞くと、いまだに「荒れている」というイメージを持つ人は少なくない。たしかに今も“やんちゃな子”や働きながら通う生徒もいるが、現在の定時制高校に通う子は不登校経験者だったり、発達に何らかの障害があるなど多様化しているという。サポートが必要な子も多く、「学校や教員ができることには限界がある。文科省は『誰一人取り残さない学び』と言うが、現状は『誰一人救えない学び』になっている」と悲痛な叫びをあげる定時制高校の校長に話を聞いた。
文部科学省は身体や知的、発達に障害を抱える子どもへの特別支援教育に力を入れているが、前編では教員不足のしわ寄せが特別支援教育の現場に偏っており崩壊している現場もあることを伝えた。
こうした特別支援教育を中学校まで受けていた生徒は、卒業後どう過ごしているのか。義務教育課程ではない高校には基本的に特別支援学級は存在しない。
しかし、近年は支援級にいた子や、本来は高校に入学できる学力や心身状態ではない生徒までが高校へ進学し、定時制高校を中心に高等教育の現場が“特別支援学校化”しているという。
公立の定時制高校で校長を務める大塚健太郎さん(仮名)は「かつては勤労青年が働きながら学ぶイメージがあった定時制高校ですが、現在は7?8割が不登校経験のある10代の生徒です。そのほとんどが発達障害や知的障害、家庭に問題があってヤングケアラー状態になっているなど、何らかの困りごとを抱えています」と明かす。
■“高卒”扱いにならない特別支援学校を避け、定員割れ高校へ進学
障害を抱える学齢期を過ぎた子どもの受け皿として、サポート体制が整った特別支援学校の高等部が存在するのに、なぜ特別支援学校ではなく高校へ進学しようとするのか。
「特別支援学校の高等部を卒業しても“高卒”扱いにならないからです。世の中のほとんどの求人が高卒以上を条件にしているので、子どもの意思や状態にかかわらず、高卒資格にこだわる保護者が少なからずいるのです」(大塚さん、以下同じ)
現在、定時制高校の数は606校、7万3331人の生徒が通う(文科省「令和7年度学校基本調査〈速報値〉」)。前年から生徒数は増加したものの、近年は学校数も生徒数も減少している。
「少子化の影響もあって定時制高校の多くが定員割れを起こしていますが、その場合は学力が著しく劣っていても、家から一歩も出られない状態でも、すべての入学希望者を受け入れなければなりません」
公立高校の入試で志願者が定員に満たなくても不合格となる、いわゆる定員内不合格が問題視されるようになり、原則として定員内不合格は行わないとする自治体は多い。それが、こうした傾向に拍車をかけているという。定員割れした他校では、目の動きでしか意思表示ができない重度の肢体不自由の生徒の入学を認めた例もある。
「エレベーターがない学校の場合は、教員が人力で対応しなければなりません。また、生徒本人や保護者が『修学旅行に行かせたい』と望めば、車いすやストレッチャーで運びながら連れていかなければなりません。対応できる設備も余力もない中で、教員が疲弊している例は全国各地で起きています」
意欲のある子に学びの場を確保するというと聞こえはいいが、設備が整っていなかったり教員の数が十分でなければ現場は苦しいだけだろう。
こうした事例は一部だが、文科省の打ち出す“合理的配慮”によって、現在は高校でも生徒や保護者から要望があれば、試験問題を含むすべてのプリントの漢字にルビを振ることは当たり前だ。
さらに文科省が2024年、不登校の高校生がオンライン授業で単位取得できる制度を導入したことも、教員をますます苦しめているという。
「そういう生徒のために通信制高校という選択肢もあるはずなのにまったくの愚策です。ただでさえ教員は通常の授業や学校行事などで多忙です。それに加えてオンライン授業の準備にも追われ、パンク寸前です。文科省は『誰一人取り残さない学び』だと胸を張っていますが、呪いの言葉ですよ。たった一人の生徒を取り残さないために、残りすべての生徒を犠牲にしている。その結果、『誰一人救えない学び』に陥っているのが現状です」
※以下出典先で
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引用元: ・特別支援学校化する定時制高校 7-8割不登校経験 高卒扱いにならない特別支援学校を避け定員割れ高校へ [七波羅探題★]
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