■売り言葉に買い言葉
これまで政府は存立危機事態について具体例を示さず「総合的に判断する」と答弁してきた。首相自身も7日の衆院予算委員会で「実際に発生した事態の個別、具体的な状況に応じて、政府がすべての情報を総合して判断する」と述べ、従来の政府見解を踏襲した。
だが、立憲民主党の岡田克也元幹事長から執拗(しつよう)に追及された首相は踏み込んだ。中国が台湾を海上封鎖し、これに介入した米軍が武力攻撃を受ける場合には「存立危機事態になり得る」と答弁した。この際、首相はほとんど手元の原稿を見ず、「自分の言葉」で述べているように見えた。政府高官はこうつぶやく。
「具体的なケースは手の内を明かすようなものだから言っちゃだめだ」
何が存立危機事態に当たるのかを明示すれば、中国が「それ以外だったらやってもいいのか」と考えかねないという意味だ。閣僚の一人は「岡田氏がかなり追及する中で出てきた答弁ではあった」と振り返り、首相周辺は「首相が答弁で踏み込んでしまう癖があることを分かっていたのだから、事務方がもっと支えなければいけなかった」と後悔を口にする。
政府関係者の言葉から透けて見えるのは、政府内で準備を重ねて答弁したというよりは、国会論戦の売り言葉に買い言葉で本音を漏らしてしまったという実態だ。首相は10日の衆院予算委で「特定のケースを想定したことについてこの場で明言することは慎もうと思う」と軌道修正した。
(省略)
■氏の慎重な流儀
踏み込んだ答弁を行うことで、中国を抑止しようとした点では、晋三元首相も同様だった。
平成24年12月に第2次政権が発足した直後、氏は尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の警備について、民主党政権が中国を刺激しないために自衛隊の行動に縛りをかけていたと知り、ただちに正常に戻すよう指示した。これを満天下に知らせるため、翌25年3月の国会答弁で「前政権の方針を根本から見直しを行った」と答弁した。
ただし、氏のこの答弁は、野党議員ではなく、自身の側近である自民党の萩生田光一幹事長代行の質問に対してだった。当時を知る政府関係者は「氏はあの答弁をするために、萩生田氏に質問させた」と証言する。答弁内容を政府内で十分検討した上で、満を持して国会審議に臨んだという。
どのタイミングで、どこまで手の内を明かし、いかなる効果を狙うのか-。政府内外の衆知を集め、詰将棋のように思案を巡らせた上で、大胆に踏み込むのが氏の流儀だった。そうした姿勢こそが自衛隊最高指揮官たる首相のあるべき姿だとすれば、高市首相の答弁に危うさがあることは否定できない。(杉本康士、竹之内秀介、永原慎吾)
11/18(火) 19:18配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/e7dbe41bd7ed9378629a86b685b64f725b234690
https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/amd-img/20251118-00000171-san-000-1-view.jpg
引用元: ・【産経新聞】高市首相の「存立危機事態」発言、台湾侵攻抑止へ「正論」も準備不足は否めず [樽悶★]
コメント